投資家の心理が変わる節目はどこか

一方、今度は、Bのローソク足で買いで入った逆張り投資家たちの心理を考えてみましょう。彼らはどんどん大きくなる含み損を抱えながら、「いつまで下がるのだろう」と、不安で悲壮な心理状態になっています。そして、Cのローソク足で直近の下値(ピンクの水平ライン)をブレイクしたときに、「もうダメだ」とポジションを投げるFXトレーダーが少なくないでしょう。

面白いことに、このような買い方の大半が投げさせられたCのあたりこそ、さらなる下落の恐怖に打ち勝てる、メンタルが強い逆張り派がしっかりと拾い、そこから相場の反転がはじまるのです。しかし、ずっと下げ続けていた相場が、いきなり急騰に転じることはほとんどありません。多くの場合、少し上がるたびに買い方が利食いを入れるため、相場は何度も何度も下に押し戻されます。 その理由は、C地点前後で買いを入れてくる多くの逆張り派の心理は、まだその上昇に懐疑的だからです。

今までの長くて急な下落が記憶に残っており、まだ積極的に買いにいけないのです。しかし、Dのローソク足で状況は一変します。前回の目立った高値である緑色のラインが上にブレイクされると、上昇トレンドに乗っかろうと目論む順張り派が一気に増えてきます。そして「この上昇は本物だ」と多くの投資家たちが楽観的になりはじめ、今まで懐疑的だった投資家の間にも、徐々に買い手の数が多くなっていくのです。

全値戻しの後の2つの値動きパターンとは

全値戻しを達成した後は、相場はしばらく2つの正反対の思惑で荒れることが多くなります。

つまり、再度、下落に賭ける逆張り派と、さらなる上昇に賭ける順張り派の、両派入り乱れての綱引きが始まるのです。順張り派の心理は「上昇はまだまだ続くぞ」と強気になっている一方、逆張り派は「そろそろ天井だ」と思ってどんどん売ってきます。

つまり、全値戻しを達成したEの地点では、真逆の心理をもった投資家が、真正面から激突するのです。このような局面では、完全な決着がつくまで、相場は大荒れの展開となります。

ここで考えられる値動きパターンは2つです。ひとつは、赤い水平線のあたりで売り支えられて、順張り派の投げをともなって大きく下落する逆張り派勝利のパターン。いまひとつは、水平ラインを明確に上抜けて、逆張り派のロスカットを巻き込んで、一気に上昇する順張り派勝利のパターンです。

このチャートでは、Fのローソク足で、明確に水平ラインを上抜けて、順張り派の勝利に終わりましたが、実際の相場でどちらのパターンになるかは、わかりません。ただ、明確にいえることは、どちらのパターンであっても、相場が大きく動く可能性が高いので、素直に値動きのある方向に乗るのが最適な戦略だと思います。

FX相場の値動きの成長サイクルとは

FXなどの相場はよく生きものといわれますが、相場の値動きには生物と同様に、誕生から衰退までの成長のサイクルがあります。

米国の著名な投資家であるジョン・テンプルトンは、相場の成長サイクルと投資家心理を重ねて、以下の言葉を残しました。

「相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観のなかで成熟し、そして、幸福のなかで消えていく」

上昇相場の誕生は、長く続く下げ相場の悲観のなかで、投げ売りされて値が下がり切った底値で起こります。ずっと底値で推移していた相場は、何かをきっかけに上昇しますが、多くの投資家はその上昇に懐疑的なので、ここで急騰することはめったにありません。

しかし、本格的な上昇が始まると、これまで懐疑的に見ていた投資家の間にも買い手が現れて、相場はどんどん膨れ上がっていきます。買いが殺到した結果、相場は驚くレベルにまで上昇し、投資家は幸福感で満たされますが、このとき相場はすでに過剰なまでのエネルギーでパンパンの状態です。

それが限界を迎えると、相場は一気に崩れ、悲観だらけの底値に戻るのです。このテンプルトンの相場格言は、値動きの本質を見事にとらえていると感じますが、相場の成長サイクルを意識して投資しているのは、ごく一部の人間といっても過言ではないでしょう。

ほとんどの投資家、トレーダーは、自分のトレード手法や資金管理手法、メンタル強化など、自分と直接的に関係することばかりに意識が向きがちです。 しかし、どんなに努力を積み重ねても、相場は常に自分を苦しめる方向に動いていると、感じている方も多いのではないでしょうか。

もし、このような投資家が、他の投資家の心理や思惑を読み、相場の成長サイクルを意識してトレードすれば、ひとつ大きなハードルを越えることができるでしょう。今後は、そういった視点から、為替相場を眺めてみてはいかがでしょうか。